タイムリミット7
「今日は雰囲気が違いますね」
「そうですか?」
それから一週間がたち、初めてのデートにのぞんだ。
ふっ…。だからテイラースイフトよ。カッコいいかどうかわからないけど。
メイクはくっきりはっきり、胸元を強調したワンピース、ヒールは以前の失態を考慮して岡路おすすめのウェッジソール。ーーこれなら転ける心配はないから!って。
ふわふわヘアーに大きなピアス、一歩間違えば古いキャバレーにいそうな女だけれども。私に怖いものはない。
ーー別にこの人の気を引こうなんて思ってないから。
「素敵です。塔子さん」
ああ、下の名前で呼んでくださるのね。
『ーー九鬼塔子。へーー鉄の鎧被って生まれてきたみたいだな』
付き合った男にそういわれたことがある。
名前の通りの女ですわ。
「あなたといると気分が高まります」
「まあ、どうも」
お上手ね。じっと目を見つめて全然嫌みに感じないのはすごいわ。
彼の方こそ上から下までバッチリ決まってる。
まるでショーウィンドーから出てきたみたいに洗練された高そうなスーツ。
お店もすごいのだ。
高級レストランのあるビルに入るなり皆がかしづくかしづく……
よほど常連なの?
正直フル装備できて良かったわ。
普段の格好じゃ絶対入れてもらえなさそう。
彼はワインをオーダーした。じっくり話をしながら決めていく。こんなに場馴れしてかつ本当にワインに詳しそうな男今までいなかったわ。
料理も一皿一皿おそらくビックリするような値段だろう。
「このお店。よくいらっしゃるの?」
「ええ、ここのオーナーをしておりまして」
え、そうなの!
「ま、まあ、レストランもやってらっしゃるの」
「いえ、このビルを貸し出してるのですよ」
ええーー?結構な建物でしたけど。
私は手を止めた。
「そ、そうでしたか。たくさんおもちなのね」
変な言い方。
「そうですね。あれと、あちらもそうです」
東京の夜景が見渡せる一等地。指されたビルを見て驚いた。
有名なデパートと複合ビルにホテル……
所有してるですって?
「大きな声で言えませんが。ーーーー持っています」
ひとつやふたつじゃない。
ちょっとなにこの人、年収1000万どころじゃなくない?
お、大地主ってやつ~?
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